ひといろ

舞台の感想とか推しの話とか

極上文學『桜の森の満開の下』~孤独~

極上文學『桜の森の満開の下』~孤独~新宿FACE 12/14 ソワレ観劇


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「このチケ代でこれ観て良いの?」ってくらい充実感が凄かったです。
原作未読だったのでストーリーの理解にはもうちょい時間がかかりそうなので今回ストーリーに関する詳細は記載しません。
ニュアンスとしては掴めているなって感覚があるんだけど、それをまだ言葉に落とし込むことが出来ていないんです。
(あれは多分原作読むだけじゃなくて坂口安吾の他の作品も読むことで初めてちゃんと理解できると思うんですよ)

もう1回くらい観られたら良かったな!そうしたらストーリーに対してもうちょっと自分の解釈を持てたかもしれないし、特に組み合わせが変わる作品は他の人が同じ役をどういう解釈で演じるのかとか、相手が違うことによる芝居の化学反応とか含めて複数回観る楽しさがあるじゃないですか。

実はこのチケット、「エヴリィBuddy!」の大阪公演が台風で行けないかもしれないと思った時に行き場のない思いをぶつけた先だったから1回しか入れてなくて(笑)
当日券が出ていたのは知っていたのですが、なぜかちょうど仕事が立て込んで当日券ダッシュすることも出来ず…本当に悔しい…!毎日21時近くまで職場にいたのが悔やまれる…!(社畜)

 

さて、そんな前置きをしつつ、以下感想文です。

 

朗読劇なんだけどめっちゃ動くよ!
動くし魅せ方が“芸術的”って感じでした。気がついたら物語の世界に入り込んでるって感じ。あんなに舞台の世界観に入り込んだって思えたの久しぶりだったかもしれません。

今年観た「百合と薔薇」も、朗読劇と言いつつ立ち稽古くらい動くような演出ついていてびっくりしたのですが、それを上回るものでした。
「朗読劇」ってただ単に本を手に持って読むだけじゃないんだなぁ…。

360度舞台でどの席にいても楽しめるような演出だったなと思います。
それにしても360度どこにいても照明の当て方が上手くて本当にキレイだった。どの位置に役者が立っても顔にキレイに当たってるの!あれはすごい(すぐ照明の話をする)。思わず途中で天井見上げて照明位置とか確認しちゃったよ(笑)
色味とかもシーンを彩るのにピッタリだった。すごい。

あとね。感動したのは「台本の使い方」。
普通の朗読劇だと台本は「読むもの」として常に手元にあるものなんだけど、この作品では「小道具」や芝居の「表現の一部」にもなるのね。
時に刀に、時に命が尽きることの比喩に…。
台本を持たずに芝居しているシーンとかもあったなぁ。
互いに台本を見せあって読むシーンも良かった。シーンも相まってとても美しかった。朗読劇なのに見所が多い!!本当に魅せ方が上手い。

あと演出といえば首を切るシーンね。
北と南だったかな?客席最前列に首もとくらいまで黒幕を張ったシーンがあったんだけど、あれ、客席を首に見立てたのよね(って思っているんだけど間違えてたらごめんなさい…)。
他にも劇中のアイテムを開演前にお客さんに持っておいてもらうっていうの面白いなって思いました。客席まで含めて舞台の世界を作っているのが本当にすごい(語彙力なさすぎて「すごい」しか言っていない)。

今回の作品には欠かせない「桜」も、天井から吊るされていたり、足元に積もっていたり、上からヒラヒラと落ちたり、下から吹き上げたり…非常に印象的な舞台美術&演出だったなぁ。美しかった。組んである足場(舞台)はすごくシンプルなんだけどね。

新宿FACEは以前ライブで1回来たことがあって、その時も面白いかたちをしているハコだなぁと思ってはいたのですが、舞台になるとああいう使い方が出来るんだなっていう新たな発見でした。ちなみに新宿FACE、格闘技のイベントもやる場所なのですよ!笑

会場と言えば、暗転中の移動もすごかった。狭いのによくあれだけ動けるなって思った(見るところ違う)。

 

開演前まで具現師さんたちが盛り上げてくれていたのも良かったです。
みなさん面白くてフレンドリー!
その時に「パイプ椅子、つらいわよ!」的な話をされたけど、まじで90分間パイプ椅子ってしんどかった…小劇場のあの背もたれがない椅子より全然マシだけど(笑)

それと開演前に「春一番」を歌ってくださったんですけど、あれを聴いたら春が待ち遠しくなってしまいました。まだ冬が始まったばかりなのにね!ついでに恋もしたいです(どさくさ)

 

さて、ここからは役者さんのお話!私が観た時はこのような組み合わせでした(敬称略で失礼します)。

鼓毒丸…梅津瑞樹

ツミ夜姫…田口 涼

ミレン/アコガレ…山本誠大

語り師…ランズベリー・アーサー

いや、とりあえず先に言って良い??梅津くん、田口さんを台本持ちながら片腕でおんぶしてたぞ??すごいね???
しかもその状態で場内ぐるっとほぼ1周するし階段も昇り降りするんですよ??
成人男性をおんぶするだけでもなかなか大変だろうに…すごい(そして思い出すインスタの投稿)。
あとね抱き締める時の表情がめっちゃ良かった!!切なさと色っぽさを含んだ表情な!!薄桜鬼にそういうシーンがあるかは分からないけどめっちゃ期待が高まってしまった。

田口さん、間近で見たら綺麗すぎて死んだ(笑)なぜそんなに女装が似合う???妖艶で、残酷で、言葉では表し難い雰囲気を見事に表現されていてとても魅力的でした。

山本さん初めましてだったけど可愛いし、なんかミレン(アコガレ)が愛おしくなってしまった。ミレンの時は健気でアコガレの時はどこか掴みどころがなくて。なぜそんなに女装が似合う???(パート2)

ランズ兄やん、画面越しでしかお声を聴いたことがなかったんだけど、めっちゃ声聞き取りやすい~さすがだわ~と思いつつ、本当に良いお芝居でした。苦悩する感じとか、こう言い表わせないんだけど、言葉の1つひとつが身体に染み込んでくるような感じだったなぁ。

 

男性が女性を演じるたびに思うんですけど、なんで男性が女性を演じるとあんなにキレイなんですかね?顔面が整った方が演じていらっしゃるということもあると思うんですけどね。
あまり“男らしい/女らしい”という言葉は使わないようにしているのですが、女の私が演じるより絶対“女らしい”と思うんですよ。私ががさつなだけかもしれませんが(笑)

それは当事者である女の私よりも客観的な「女性性」を演じることで、観る側に「女性っぽさ」を感じさせるのかなって思ったり…。

今回、オールメイルでやったわけだけど、自分がツミ夜姫ないしミレン(アコガレ)をやったらどんな感じになるのかなぁってことも実は帰り道に考えていたのですが、あんな艶っぽさ、出ない気しかしないな、うん…。艶っぽさってどこから来るんだろう…? 

 

 

そして最後に梅津くんのお話。

梅津くんのお芝居は本当にすごいと思います。観るたびに引き込まれる。
確かに「巧い」んだろうけど、私はそれ以上に彼から芝居や演劇が好きだという熱い思いを感じるのです。

彼にとって芝居は「表現」の手段の1つだと思うけれど、「表現をする」ことに対する追究がすごいのだと思うのです。

決して楽しいことだけじゃない。ここまで来るのにたくさん悩んでたくさんの努力を積み重ねてきたはず。でもその原動力は彼の芝居への想いだと思うんですよね。

彼は彼の魅力がある。これからも色んな芝居を観るのが楽しみな役者さんだなと改めて思いました。

けれど彼が同期にいたら尊敬すると同時に嫉妬の嵐かもしれない。あんな才能の塊、傍にいたら気が狂いそう(笑)

梅津くんのミレン/アコガレも観たかったなああああ!!!!
来年どういう配役になるのか分からないけれど、とても楽しみです。


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ちなみに本作のパンフレットにも記載されていた「あなたにとって“孤独”とは」って質問項目について自分でも考えてみたんですけど、「心が通わない」ことなのかなってぼんやり考えていました。
私自身はどちらかというと一人の方が落ち着くタイプなのですが、物理的に一人でいることに対してはあまり「孤独」を感じないけれど一緒にいても心が通っていないなと感じた時にはどうしても「孤独」を感じてしまうんですよね。
まぁ、よくよく考えると「孤独」って他者がいるから(または他者の存在を感じるから)生まれる感情であって、人っ子一人いなければ恐らく「孤独」っていう感覚も生まれないんじゃないかとも思うのですがね…。