舞台「刀剣乱舞 維伝 朧の志士たち」@赤坂ACTシアター 12/29 ソワレ・1/2 マチネ観劇
維伝、新たな章が始まるという、ある種ターニングポイントのような作品でしたが悲伝までのストーリーを考えると非常に分かりやすかったなという印象です。
ゲームのイベントをあれだけ膨らませた上に、ちゃんとシリーズものとしての繋がりがある脚本すごい。
なんとなくだけどジョ伝が好きな人は維伝も好きなタイプじゃないかなと思います。うん。
これまでの作品と繋がりのある作品なので、観ておいた方が今後のためにも良いと思うよ!(とだけ言っておく)
以下、ネタバレありですのでご注意を!
パンフもだいぶ分かりやすいように色々出てきましたね。
(思わず「あれ?TRUMPかな??」となったのはここだけの話)
ただ分かりやすくなったとは言え、伏線(というよりも今後重要になっていくであろう事柄)はしっかり入れていくスタイル。
今回の維伝は悲伝までの話をあらかた回収し終えているので、単発で楽しめるなと思いつつも、刀ステシリーズおよび刀剣乱舞という作品を知らない人が予習なしの初見で見て十分楽しめるかと問われると、ちょっと微妙だなとも感じました。
もうこれはシリーズものとして3年ほど続けているし、そもそも2.5次元舞台全般がそういう感じなので仕方ないかなとは思うけど。
でもストーリーはものすごく熱くて良いお話なので、それだけで楽しめちゃう気もしてくるくらい今回は勢いが凄かったです。むしろキャラメルとか役者きっかけで観た人に「他のシリーズ作も観たいかも」って思っていただけるかもしれない(と勝手に思っている)。
とにかく芝居の熱量でぶん殴られた感がすごかった(とても褒めている)
人間キャストについて
何をおいてもまずはこれ!!2.5次元をほとんど観ない演劇関係の知人に刀ステの話をした時、思わず「今回の人間キャスト化け物揃いでした」という感想を述べてしまった(笑)
これまで演じてこられた役者さん、それぞれにとても魅力的だったのですが、今回はもう「化け物」と言ってしまうくらいには説得力がありすぎたし、みんな命削りすぎててこっちが心配になるくらいの迫力。特に岡田以蔵役の一色洋平さんがすごいんだ…。歩き方1つとっても「役が身体に馴染んでる」ってこういうことなんだろうなって思わせるようなお芝居でした。
わりとエンターテインメント性が表に出てくる2.5次元ジャンルにおいて、THE 演劇畑で培ってきた役者さん方の芝居が融合することの面白さね。
ちゃんと2.5次元の華やかさもありつつ、どっしりとした演劇(芝居)であるなと思いました。
あと歴史上の人物の何が良いって「良き世にしようと命をかけていた偉人たちが問いかける」部分なんですよ。刀剣男士を通して我々観客に問いかけていることでもあると思うんですね。ここが本当にぐっとくるポイント。
私、幕末の話って倒幕も佐幕も「己の意志のもと、時代の荒波の中戦った人たち」というところが胸熱で本当に好きなんです。今回も龍馬や以蔵の問いかけが何よりも胸にぐっときたし、「この人たちに胸張って良い国だと言えるのか」と内省しました。
舞台装置について
バミリの数がえぐいね!!!!!!!!(推しを見ろ)
ACTの2階席で見てた時に双眼鏡を使っていたのですが、バミリの数がすごい。
どのシーンでどのバミリなのか分からなくなるんじゃなかろうかという数。
工夫に富んだ変形型の舞台美術ですごかった。
そして足場が動く中でガッツリ殺陣をやるキャスト陣のスキルの高さ。
一見シンプルな舞台セットなんだけど、移動させて組み合わせることで全然違うものに生まれ変わるあの舞台美術すごいよ。デザインどうなってるの????デザイン集とかほしいです!
鶴丸について
染谷さんが演じる鶴丸も健人くんが演じる鶴丸も、どちらも甲乙つけがたいくらい好きなのですが、さすが染谷さんだなぁと思いました。染谷さんの鶴丸は結構どっしりしてて、健人くんの鶴丸は軽やかって言葉が当てはまるよなぁなんて…。
だがしかし、染谷さんが演じるとユーモアが強くなるのはなぜだ!!!笑
それが染谷さん故なのか演出なのかはさておき、ちょっとお茶目な側面と、大人の余裕と、戦闘時に血の気が多い鶴丸は「あー、染谷さんの鶴丸だなぁ」って思います。
「ちょっとぉ~刀剣男士ぃ~」ってところお気に入りだし、日替わりも好き。
蔵出しで日替わりたくさん入れてほしいな…!!!
(刀ステで染谷さんが気になった方はぜひ「あさステ 土曜日」をご視聴くださいね。「攻める」のが土曜日です 笑)
実は染谷さん、去年の朗読劇「百合と薔薇」の中でも劇中で刀剣乱舞のネタが振られていて、その時は「知らない!気にならない!笑」とひたすら言い張っていたんですよ(笑)
んなわけあるかい!!ってみんな思ってたけどww
その後に出演が発表された時には非常に驚きました。いやブログで「今年は白い衣装を着る機会がまたあるかもね~」的なことを匂わせてたこともあったな(笑)
2.5次元の芝居において、容姿もさることながら「声を原作に寄せる」ということも観客側が「あ、キャラがそこにいる!」って感じる部分になるのでとても大切な要素の1つなのですが、染谷さんの場合、声は似ていなくても「あ、そのキャラだな」って思わせるのがとても上手なのだと思います(染谷さんの2.5次元の演技についてはここ数年出演された作品しか観ていない人間なので昔がどうだったかは分からないけどね)。
表情とか仕草とか、セリフの出し方とか、佇まいとか。
雑誌のインタビューを読むと本当に色々研究されているしものすごくストイックな人なんですけど、あまりそういったことを表に出さないし、毎日のブログもゆるふわなので、そういうところがまた素敵だなと思う役者さんです。
染谷さんのお芝居に関するエピソードとしてはよく私、このインタビューの話をするんです。
「舞台で一番楽しい瞬間と一番辛い瞬間はいつですか?」っていう質問に対して
僕は楽しんではいけないと思っているんです。稽古中や本番中も楽しまないというスタンスで、振り返ったときに「あのとき楽しかったな」と思えたらいいなと思っています。例えば辛い場面や悲しい場面で、演じている自分が芝居することを楽しんでしまったら、それは自己満足になってしまうなと。自分に酔ってしまっているというか。楽しい場面ならば、役が楽しんでいるようには作りますが、僕が楽しんでいるわけではないですよね。
って答えているんです。もちろん「芝居楽しいな!」って思って演じている役者さんに対してそれがダメというわけではないですよ?「芝居楽しいな!」って思ってる人の芝居もまたすごく魅力的。
でもこれだけストイックになれる精神力というか、一見クールそうだけど内側に熱いものをもっている人なんだなぁっていうのが感じられて好きです。
個人的に染谷さんの鶴丸を観て演劇の世界にカムバックした私だったので、観ることが出来て良かった。本当に良かった。最初観る前は感極まったらどうしょうとハラハラしていたのですが、いざ幕が上がれば「あーいつもの染谷さんだー!」という安心感しかなく(でも2回目に観た時、序盤も序盤「出迎えご苦労!!」という一声でなぜか涙が出てしまったのはここだけの話 笑)。
あと染谷さんは芝居の緩急の付け方が上手い。
基本的にシリアスなこの刀ステの作風において、今回笑いのパートを引き受けてくれたのは鶴丸だったのですが、それでも締めるところは締めてて、笑いの後引きなかったんですよね。
それにしても今作では鶴丸に対する謎もやや深まったような感じなので今後の鶴丸の活躍が非常に楽しみだなぁと思いました。
(最初キャス変はスケジュール都合だと思っていたのにまさかパンフにそれぞれ2振り分記名されているとは思わなかったじゃん????あれは過去出演した全刀剣男士という意味合いですか??それとも作品的な意味合いがちゃんとありますか????でも染鶴さんは「小烏丸」って呼んで、健鶴は「小烏丸様」って言ってたから個体差はある…と考えて良いのでしょうかっ!!!)
キャスティングについて
緩急と言えば小烏丸役の玉城くんも本当にすごくて。私、刀ステの小烏丸大好きなんですよ。悲伝の時から本物だーって思ってたんですけど、維伝でそれがより確かなものになったなと。今回紅白鳥太刀を演じたお二人が、役者としてキャリアを積んでいる方々で、芝居に安定感があって土台としてしっかりしていたのが本当に素晴らしかった。
土佐組のキャストは同い年(同学年)で、土方組は若手のフレッシュさで、若いキャストと経験値が多いキャストとのコントラストがまた、刀剣男士に置き換えても古刀と新刀の違いみたいなのが体現されていたのではないかなと。
年齢関係なく芝居がうまい人はいくらでもいるし、細かいことを言うと堀川くんはキャストの中では最年少だけど刀としては(真作であれば)和泉守より生まれが早いので色々違う部分はあるものの、今回は役者の実年齢がキャラとよくマッチしていたようなのであえて言及しました。
キャスティングぐっじょぶ!!!
あと、とにかく陸奥守が光属性で泣いた。絶対闇にとらわれることがないだろうあの刀は。刀ステだとソハヤも圧倒的光属性なんだけど、陸奥守はずば抜けて光。蒼木陣くん陸奥守を演じてくれてありがとうって気持ちしかない。
あとね、三好くん演じる南海先生が本物すぎてセリフ発した瞬間に「!?」ってなった(笑)PatchのSPECTERで三好くんを観た時から良い声した役者さんだなぁと思ってたんだけど南海先生、ハマり役でした!
刀とは?刀剣男士とは?
悲伝までは「三日月宗近」という刀剣男士のことがメインになっていたように思いますが、シリーズを通して一貫しているのは「刀とは?」「刀剣男士とは?」「歴史を守るとは?」という「刀剣乱舞」という世界観に切り込んでいく内容なんですね。刀を元にした「刀剣男士という存在」自体への問いのように感じます。
そして刀を語る上で強く関連がある「物語」もキーワードの1つ。
元の持ち主由来のもの、刀工由来のもの、ありもしない逸話由来のもの…刀剣男士はそれぞれの“物語”が形を成して人間の身体になっている。
小烏丸も悲伝で「刀に寄せられた心が物語になる」と言っていましたね。
ちなみに今回の維伝で南海先生が語る言葉はイベント中の陸奥守の回想を使っているようなので、刀ステの特殊設定とかではない…はず…。
(私自身、陸奥守入れて調査しなかったせいでこの回想回収してなかったんですな…ははっ…)
陸奥守が今作の最後に「歴史を守るのが刀の本能…わしは刀じゃ!」って言うんだけど、なんか陸奥守が「俺は歴史を守る」って宣言しているようにも思えました。
(そうなると、それに反する刀が出てくるのか…って話にもなるんだけど…)
ちなみにアニメの「活撃 刀剣乱舞」でも、この「歴史を守ること」という部分に触れているんだけど、この時は“正史が変わらない部分で歴史を守ることが出来ても、時間遡行軍が現れたことによって失われたものが多くある。これは本当に歴史を守っていると言えるのか”といった内容だったんですね。
刀ステでは今のところ、そういった切り口ではなさそうなので、この本丸における「歴史を守ること」がどういう部分に行き着くのかがとても気になります。
「刀剣乱舞」のメディアミックス作品それぞれにおそらく共通するものがあって、それはまだ明かされていなくて、多分三日月が極める時に全部明らかになるんじゃないかなって個人的に期待したりしています(だってニトロだし…)。
義伝で三日月が「歴史を変えようとするものと戦っている」と言っていたことも、どこかで回収されるのかなぁ。
その他気になるところ
思い返せば小烏丸や鶴丸は結構三日月のことを意識したようなセリフが多かった印象なんだけど、陸奥守や和泉守、堀川はそういう発言がなかったなぁって思いました。
顕現した順でいえばその3振りも三日月と共に過ごした時期があったはずなんだけど、任務優先で脇道逸れたことはあまり言わなかったような…?紅白鳥太刀は密命を受けていたこと以外にも特別枠なのか??
まぁ、和泉守も堀川も今回から登場したのでいきなり三日月について色々言い出しても逆に不自然かなとも思っちゃうんですけどね!話ごちゃごちゃしちゃうし今回は龍馬と陸奥守の物語なので(メタい)。
そして例の時間遡行軍な!!!そうお前!!!!お前だよ!!!!!
一幕終わった後の客席の動揺というか困惑具合がものすごく空気として伝わってきたし自分自身もかなり困惑していた(笑)
鶴丸が「この剣筋!」って言うのでもうあれは鶴丸が知っている彼なのだと信じて疑わないのですが、どうしてこうなった????
一生懸命考察しようと思ったけどやっぱりそういうのは苦手でまとめられなかったので、得意な方のを読んでください(笑)
次回は歌仙さんが隊長っぽいので、どんな“物語”が紡がれるのか今から楽しみです。
そしていつも書いていることなんだけど、色々考察をしつつも基本的には我々は観るだけで、観ているものは作り手側が「1から創り上げた」ものなんですよね。それは脚本・演出の末満さんはじめキャストの皆さんやスタッフさん方が試行錯誤の上に創り上げたもの。
こうして考察するための「要素」が色々な部分に散りばめられているのは、作り手側が本当に細かい部分まで丁寧に創り上げた証拠だと思うのです。その労力は我々が計り知れないもの。歴史に対しても刀剣乱舞という作品に対しても愛がなければ出来ないものだと思います。
改めて、ここまで素敵な作品を創り上げてくださった皆様に感謝を!
(ちなみに末満さんの細かいディレクションについては作品が違うけどTRUMPシリーズ COCOONの特典ディスクでどういったディレクションをされているのかがめちゃくちゃ良く分かるのでぜひ見てほしい。あれを見ると舞台に関わる人間は役者含め全員“クリエイター”だなって思うので。)