ひといろ

舞台の感想とか推しの話とか

ファンダムとチャートの話

ちょっと前に出たこの記事の話。

ノロノロ書いていたら完全に「いまさら~?」みたいな感じになってしまいましたが、折角書いたので。

ちなみに今回書いている内容はあくまで私の主観的な部分を書き出しているので、そういう前提で読んでいただけたらなと思います。ちゃんとしたデータに基づいて書かれたブログもあるので「ファンダ厶 チャート」とかで調べてみてください。

 

kai-you.net

 

少なからず日本でも昔から「好きなアーティストをチャートの上位に入れたい(からCDを複数枚買う)」ということは、ここまで露骨でないにしろあったんだと思うんです。知らんけど。

ただ実際の楽曲の認知度=チャート順位でなくなってきたのは、「握手券」や「投票券」がCDの特典に積極的に付き出した頃からなのかなと思っていて。それに加えてK-POPが日本でも流行り出して、K-POP流の「応援方法」が浸透してきたがゆえに、ファンダムによる「チャートハック」が生じやすい環境になってきているという感じがします。
いわゆる「スミン活動*1」とかですね(日本だとまだまだCD販売が主流ですが…)。

誤解のないように言うと、K-POPのファンダムの応援方法が悪いとは思いません。それに向こうのファンダムの応援範囲は決してスミン活動だけでなく、それ以上にアイドルの活躍を支えるようなサポートが大規模で展開されてますから。。。

 

ただ当事者として思うのは

音楽を楽しむこと

アイドルを応援すること

はそもそも別物で、切り離して考えている人も多いのでは?ということ。

 

もちろん推しの音楽は好きなのでダンスパフォーマンス含めて純粋に楽しんでいる人も多いと思います。むしろそういう人が大半かな。
でも熱心に応援している人の中には初週売上に必要な「指標」を頑張ることが最優先であり、目的になっている人もいるかもしれないね。義務と捉えている人もいるかもしれない。

 

私もアイドルが好きですが、なんかもう色々頑張るのは疲れるお年頃なので完全に前者だったりします。推しには上位に入ってもらいたいが、入ってもらうために自分が鬼のようにMV回したりストリーミング回したりするのは無理。
好みの曲なら出来るけど、ぶっちゃけそうでない時もあるので。

 

私個人としては初週売上も大事だけど、低位置でもずっとその楽曲がチャートにいたり、音楽番組やYouTubeでバズって過去発売曲がチャートに浮上してきたとか、そういう動きが見えると「あ、気に入ってくれる人が増えたんだな」って思って嬉しいと感じます。

 

閑話休題

 

ファン側がチャートハックしてまで押し上げたい理由って主に以下の3つだと思っているんです。

  1. チャート上位に入ることで多くの人に知ってもらえる機会を創出(認知拡大)

  2. 売上を上げることでグループ活動に箔を付ける(実績)

  3. 1および2によって事務所・レーベル・広告主へ需要をアピール(活動機会の創出)


ファン側は「売れるところに企業側がお金(広告宣伝費・制作費)を出してくれる/仕事を持ってきてくれる」と考えています(いわゆる「大人の事情」は除く)

そりゃお遊びではなく、ちゃんと“ビジネス”でやってるんだから、採算が取れないようなところにお金を出さないなんてことは、特に社会人はよーく知っていると思うんです。

 

じゃあそれを達成するためにはどうしたら良いのだろう?
=文句がつけようがないくらいの“実績”をつければ無視なんて出来なくなるでしょ?

というのがファン側の考えです(あくまで私が自界隈の内外で観測した範囲の話ですが)。

 

ちなみに数字の話は以前こちらでも書いたので、合わせてどうぞ。

hitoiro.hatenablog.com

 

なのでそもそも「音楽を“聴く”とは言えない」と言われても、そりゃ提供する側がそうなんだから、ビジネス思考になるのは当たり前なのでは?って感じがするのです。寂しいことですけどね。

純粋に音楽として楽しんでほしいのであれば、そういう余計なことを考えさせないくらいのプロモーションだったり、相応にアイドルを扱ってほしいってものです。
(レーベル側だって再生数によるキャンペーンとかやってるじゃんかーって思うしね)

 

ぶっちゃけ「お茶の間でみんなが音楽番組を楽しむ」というスタイルが廃れた日本の今の音楽シーンで、“万人が共通して知っているヒット曲=売上と知名度が釣り合っている曲”なんて生まれづらいと思うんです。
YouTubeなりTikTokなり、比較的人が集まりやすいところで話題になった曲がTVでも流れるようになって、そこでやっと広く世間に知られるようになる。

メディアがSNSでバズってる話題や、一度人気になったグループや特定の事務所ばかり取り上げて、独自調査でネクストブレイク見つけたり他のグループを掘り下げて話題にしないの、情報を発信する側の怠慢としか思えないんですけどね!!!!大人の事情とやらがあるのかもしれないけど!!!!

個々で楽しむことが主流の今、タイアップなしで普段聴かないアーティストを知ってもらうにはグループや曲の知名度自体を上げないことには難しいんです。

 

とは言え、チャートハックすることで「大して耳にした曲でもないのに、なんでこんなに人気なんだろう?」「どうせファンがCD積んだんだろ(再生回数増やしてるんだろ)」って思われることも“さもありなん”なので、「推しがいるから」「推しのために」って行動って作品が評価される時(そもそも評価とは?って感じだけど)に、ノイズでしかないことも確かではある。

別件だけど先日こんなまとめを目にして、コメント欄に書かれていることが身につまされる話だったのでアイドルのファンは1回読んだ方が良いなと思いました。

応援のためにやっていることが、実は推しのイメージダウンを招いているかもしれないって話です。あの記事でのBillboard Japanの言葉のチョイスは確かによろしくなかったけれど、多分ファンダムに向けて伝えたいのはこういうことだろうと…。

togetter.com

 

話しずれた…。

音楽の話に戻すと、今回のインタビュー記事のBillboard Japan側の言葉には色々思うところがありながらも、私自身もアイドル側が色々な想いを込めて制作した楽曲を大切にできていないのは、やっぱり悲しいと思うし、その点で言えばBillboard側の「(再生することが目的となっていて)音楽を“聴く”とは言えない」という言葉にも共感するんです。

私が好きなグループや推しは毎回「こういう想いを込めてアルバムを作ったよ」「たくさん愛してね」「今回は○○にこだわったんだ」ってことを伝えてくれるんです。だから確かに順位も大事だけれど、その想いをちゃんと受け止めて音楽を愛したいなと。

 

アイドルの中でも自分たちで作詞・作曲・振付までするような人たちもいますが、大体の楽曲はいわゆる“アーティスト”と呼ばれる人たちと違ってすべて「提供されているもの」なんですよね*2

でも楽曲を各々が噛み砕いて(解釈して)レコーディングし、パフォーマンスするのがアイドルで、決して彼らが与えられたものだけを受け身でやっているわけではなく、そこには必ずアイドル自身の「こだわり」があるわけです。

数字を反映することが目的になって楽曲を楽しめない・大切にできないとなると、どんなに良い成績を獲れたとしてもアイドルたちの楽曲に対する思いまで踏みにじってしまう気がして、いつしか私は数字のために頑張ることを考えなくなりました。何よりも金銭的に限界が来る

ただ私のような考え方とは相容れない人もいると思いますし、CDをたくさん買ったり再生をたくさんしたりすることによって、確実にアイドルの活動の力になっている人たちがいるのも事実。

この話をし出したらキリがないしファンダム内でも衝突が多い話題なのですが、そういう時はもうこう言うしかないのです。

「サンは森で、私はタタラ場でくらそう。」

 

 

ちなみにK-POPのファンダムについては田中絵里奈さんの「K-POPはなぜ世界を熱くするのか」に詳しく書いてあるので、K-POPファンの人もそうでない人もぜひ読んでほしい(この本については読み終えたら別途記事を書けたら良いなと思っている)。

www.asahipress.com

 

それにしてもさー、「チャートハックは楽しいですか?」って言葉、言いたいこと分かるけど、イラッとしたよねー。
もっと健全に音楽を楽しんでほしいという気持ちから出てきた言葉だと解釈してはいるけど、そうは言ってもチャートがある限り、社会構造やプロモーションが変わらない限りこの問題は終わらないと思うんだよな。

それに冒頭で書いたとおり、音楽を楽しむことと、アイドルを応援するということは別物なのよ。前者はスポーツ観戦だし、後者はスポーツ選手として競技に出場するようなものなのよ(例え方がド下手)(伝われ)。

だからいっそのことアイドル専用チャートを作ったらどうかな?って気がしてしまったよ。そうしたらもうそこはファン同士の札束での殴り合い団体戦なので、どんなにやり合っても他に影響出ないでしょ?って思うんだよなー。

 

 

 

 

なお、私が最近ハマっているC-POPグループ、今調べたらSpotifyで月間リスナー85人でした。
チャートハックの話を色々偉そうに書いたあとでなんなんですが、あまりにも人数少なくてさすがに「いやこれチャートに押し上げてええええ」って思ってしまった自分がいることをここに懺悔します(笑)どうしてもなくせないオタクの性…。業が深い。

 

 

 

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marshmallow-qa.com

*1:音源や動画を再生して数をかせぐこと

*2:もちろんアーティストの中にも他者から提供された楽曲を歌ってる人もいる